以前の記事 で自作のプラグインマネージャー dvpm を紹介してから、はや2年半以上が経過しました。
自分でも使い続けながら、少しずつ改良を重ねてきたのですが、特筆すべき大きな進化が2つあるので紹介したいと思います。
それが、キャッシュ機能 と 遅延ロード機能 です。
起動直後からプラグインを使いたい! (キャッシュ機能)
前回の記事で、 dvpm の特徴として「どれだけプラグインを入れても起動速度が劣化しない」という点を挙げました。
しかし、これには「起動直後はプラグインがまだ読み込まれておらず、バックグラウンドで denops が立ち上がってから順次読み込まれる」というトレードオフがありました。
「爆速で起動してほしいけど、起動した直後から Telescope などのプラグインをすぐに使いたい……」
そんなわがままを叶えるのが キャッシュ機能 です。
仕組み
dvpm のキャッシュ機能は、各プラグインの runtimepath への追加処理や、 before / after で指定した Vim script / Lua の設定を、一つの .vim ファイルに書き出します。
次回以降の Vim / Neovim 起動時に、このキャッシュファイルを source するように設定しておけば、 denops の起動を待たずして、通常のプラグインマネージャーと同じように起動時からプラグインが有効になります。
設定方法
Dvpm.begin でキャッシュファイルの出力先を指定し、各プラグインで cache.enabled: true を設定するだけです。
export async function main(denops: Denops): Promise<void> {
const base_path = (await fn.has(denops, "nvim")) ? "~/.cache/nvim/dvpm" : "~/.cache/vim/dvpm";
const base = (await fn.expand(denops, base_path)) as string;
// キャッシュファイルの出力先を指定
const cache_path = (await fn.has(denops, "nvim"))
? "~/.config/nvim/plugin/dvpm_plugin_cache.vim"
: "~/.config/vim/plugin/dvpm_plugin_cache.vim";
const cache = (await fn.expand(denops, cache_path)) as string;
const dvpm = await Dvpm.begin(denops, { base, cache });
// キャッシュを有効にする
await dvpm.add({
url: "tani/vim-artemis",
cache: { enabled: true },
});
// 起動時にすぐ表示されてほしいダッシュボードなどはキャッシュに最適
await dvpm.add({
url: "goolord/alpha-nvim",
enabled: async ({ denops }) => await fn.has(denops, "nvim"),
cache: {
after: `
lua << EOB
require("alpha").setup(require("alpha.themes.startify").config)
EOB
`,
},
});
await dvpm.end();
}このように設定しておくと、 dvpm がキャッシュファイルを自動生成してくれます。
ダッシュボードのような「起動した瞬間に見えていてほしい」プラグインでも、ストレスなく利用できるようになります。
キャッシュの詳細オプション
キャッシュ機能にも、通常ロードと同様に、以下の設定オプションが用意されています。
before: プラグインがruntimepathに追加される 前 に実行する Vim script / Lua を記述します。after: プラグインがruntimepathに追加された 後 に実行する Vim script / Lua を記述します。beforeFile:beforeと同様ですが、文字列ではなく外部ファイル(.vimや.lua)のパスを指定して読み込ませます。afterFile:afterと同様に、外部ファイルのパスを指定します。
before, after, beforeFile, afterFile のいずれかが設定されている場合、 cache.enabled: true は省略できます
必要な時だけ読み込みたい! (遅延ロード機能)
最近のプラグインマネージャー( lazy.nvim など)では当たり前となっている 遅延ロード (Lazy Load) にも対応しました。
「特定のファイルタイプを開いた時だけ」「特定のコマンドを叩いた時だけ」といった条件でプラグインをロードできます。
設定例
dvpm.add の lazy オプションで指定します。
// コマンド実行時にロード
await dvpm.add({
url: "tweekmonster/startuptime.vim",
lazy: { cmd: "StartupTime" },
});
// 特定のイベント発生時にロード (例: インサートモードに入った時)
await dvpm.add({
url: "cohama/lexima.vim",
lazy: { event: "InsertEnter" },
});
// ファイルタイプに応じてロード
await dvpm.add({
url: "OXY2DEV/markview.nvim",
lazy: { ft: "markdown" },
dependencies: ["nvim-treesitter/nvim-treesitter"],
});
// キー入力でロード
await dvpm.add({
url: "mbbill/undotree",
lazy: {
keys: {
lhs: "<leader>u",
rhs: "<cmd>UndotreeToggle<cr>",
mode: "n",
desc: "Undo Tree",
},
},
});
// ライブラリとそれを使用するプラグインの遅延ロード
await dvpm.add({
url: "kana/vim-textobj-user",
lazy: { enabled: true },
});
await dvpm.add({
url: "kana/vim-textobj-entire",
dependencies: ["kana/vim-textobj-user"],
lazy: {
keys: [
{ lhs: "ie", mode: ["x", "o"] },
{ lhs: "ae", mode: ["x", "o"] },
],
},
});keys の指定では、プロキシマッピングを自動で作成し、キーが押された瞬間にプラグインをロードして、本来の機能を実行するようになっています。 mode や desc を指定することで、 which-key.nvim などのプラグインとも相性良く設定できます。
遅延ロードの詳細オプション
遅延ロード設定は配列指定など、いくつかのパターンで設定できます。
- 配列での指定:
cmd,event,ft,keysはいずれも配列を受け取れます。複数のコマンドやファイルタイプをきっかけにロードしたい場合に便利です。 keysのlhsのみ指定:rhsを省略してlhsだけを指定することも可能です。この場合、ロード後にdvpmが作成した暫定的なマッピングを解除(unmap)し、プラグイン側が本来定義しているマッピングが有効になるように振る舞います。- 依存関係の自動ロード:
lazy設定されたプラグインが読み込まれる際、dependenciesに指定されたプラグインも(それらがlazyであっても)自動的にロードされます。
ライフサイクルと User イベント
dvpm はプラグインの登録からロードまでの各工程で、詳細に制御するためのフックと User イベントを提供しています。
フックの実行順序は以下の通りです。
add/addFile:Dvpm.end()実行時に常に実行(ロードの有無に関わらず実行)。before/beforeFile:runtimepathに追加される直前に実行(遅延ロード時はロード発生時)。after/afterFile:runtimepathに追加され、plugin/*.vimやplugin/*.luaがソースされた直後に実行。
また、これらに合わせて詳細な User イベントも発火します。
システムライフサイクルイベント
DvpmBeginPre/DvpmBeginPost:Dvpm.begin()の前後。DvpmEndPre/DvpmEndPost:Dvpm.end()の前後。DvpmInstallPre/DvpmInstallPost: プラグイン全体のインストール前後。DvpmUpdatePre/DvpmUpdatePost: プラグイン全体のアップデート前後。DvpmCacheUpdated: キャッシュファイルが更新された時。
プラグイン個別イベント
DvpmPluginLoadPre:{pluginName}/DvpmPluginLoadPost:{pluginName}: 個別ロードの前後。DvpmPluginInstallPre:{pluginName}/DvpmPluginInstallPost:{pluginName}: 個別インストールの前後。DvpmPluginUpdatePre:{pluginName}/DvpmPluginUpdatePost:{pluginName}: 個別アップデートの前後。
※ {pluginName} は dvpm で管理されているプラグイン名です。通常はリポジトリ URL の末尾(例: cohama/lexima.vim なら lexima.vim)になりますが、 dvpm.add の際に name プロパティで任意の名前を指定することも可能です。
このように、Vim script / Lua 側からも autocmd User DvpmPluginLoadPost:lexima.vim ... といった形で、特定のプラグインがロードされたタイミングをフックすることができます。
また、ワイルドカードを使って、各プラグインがロードされるたびに共通の処理を一括でフックすることも可能です。
// 各プラグインがロードされるたびに、そのプラグイン名をログに出す例
await autocmd.define(
denops,
"User",
"DvpmPluginLoadPost:*",
`echom "Loaded plugin: " . substitute(expand("<amatch>"), "^DvpmPluginLoadPost:", "", "")`,
);他にも DvpmBeginPre/Post, DvpmEndPre/Post, DvpmCacheUpdated といったシステム全体のライフサイクルに合わせたイベントも用意されています。
まとめ
キャッシュ機能と遅延ロード機能が加わったことで、 dvpm は「TypeScript で Vim / Neovim の設定が書ける」という変態的なメリットを維持したまま、現代的なプラグインマネージャーとしての利便性と、圧倒的な起動速度の両立を手に入れました。
「やっぱり設定は型安全に TypeScript で書きたい!」という方は、ぜひ試してみてください。